2007年02月10日
「マネーロンダリング」平尾武史、村井正美

「粉飾の論理」に続いて、資本主義の闇本。ノンフィクションであるにもかかわらず、読み物として非常によく出来ている。面白くて次へ次へと進めていく内に、新幹線で東京と岐阜羽島の往復の間に読了。
クレディ・スイス香港のプライベートバンカーが提案したスキームで、ヤミ金でせしめた金が香港、シンガポール、そしてスイスへと洗われていく。逮捕されたのはヤミ金のボスたち、そして山口組系暴力団のトップ、さらには、プライベートバンカーと彼に顧客を紹介していた会社経営者。クレディ・スイスでは、優良顧客を紹介する人間を「インターミディアリー」として優遇する。
ヤミ金の幹部たちは、司法の手が回ると知れば世界中を逃げる、いや豪遊して周り、逮捕されても3年間冷や飯を食うくらいにしか思っていない。娑婆に出れば洗浄した資金で遊んで暮らせるのだから。
後手後手に回っていた日本の司法も動く。刑事や検察官の努力によって国際的な協調体制もできあがる。結果、彼らの資金は凍結された。インターミディアリーの「かつては普通だったが一線を越えてしまった男」は、台湾で身柄を捕獲され日本へ移送される飛行機の中、声を出して泣いた。
事実は小説よりも奇なり。
投稿者 hideo:2007/02/10 00:00 > コメ (0) > トラバ (0)
2007年01月30日
「粉飾の論理」 高橋 篤史

読み出したら止まらなくなる。登場人物と会社(架空のものも含めて)の数、そしてファイナンス技法が複雑に絡み合っているため、何度も同じところを読み返すことになる。それで止まらない。久しぶりに興奮する一冊に出会った。
世間を騒がせたあのライブドア騒動は話の導入に過ぎない。
カネボウが期末に行った取引先との架空在庫のキャッチボールでの見せかけの黒字、石川県のとある繊維財閥を巻き込みながらの連結外しによる赤字隠し。ライブドア事件の裏側で真相が明るみに出にくかっただけに、事実が不気味な説得力を持つ。
さらに、ヘラクレスに華々しく上場したメディア・リンクの狂騒劇でクライマックスを迎える。売り手が最終的に買い手となる、まるで子供だましのような「循環取引」。損をするのはメディア社。キャッシュフローがどんどん無くなり。無軌道な増資、手形の乱発を繰り返す。周囲には怪しい金融ブローカーが次から次へと現れ、錬金術を駆使して獲物を骨の髄までしゃぶり尽くす。
カネボウの事件は、サラリーマンや平取などが主だって起こした。メディア社の事件は、売上ノルマを達成したいと思うどこにでもいそうな営業マンが起こした。婆ちゃんに「他人を見たら泥棒と思え」と言われたことを思い出す。闇の勢力はすぐそこにいる。弱ったエリートこそ狙われる。
現実世界には魑魅魍魎で溢れている。
黒魔術が行われている。
事実は小説よりなんとやら・・・。
ノンフィクションが、オカルトやSFを超えた。
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2006年12月26日
「アザー・ファイナル」ヨハン・クレイマー

2002KoreaJapanの裏側で行われた、FIFA世界ランキング最下位決定戦、ブータン×モントセラトの決戦、それに至るまでの両チームを取り巻く動きを納めたドキュメント映画。
試合前、最下位がモントセラト、ブービーがブータン。ブータンはヒマラヤの仏教国。モントセラトはカリブ海に浮かぶ火山島。ブータンはお金が無いので遠征ができないため、モントセラトがやってくる。
モントセラトのメンバーは試合直前まで下痢続き、審判もなかなか揃わない。試合会場のコートはみんなで芝刈りをする。スポーツを試合の勝ち負けだけでなく、国を超えた人間同士の交流という側面から捉える。
凝ったカメラワークなど、ヨーロッパらしい演出が鼻につくものの我慢できないことは無い。それよりも、スタジアムに通い続ける毎日、どうしても忘れがちな大切なものを思い出させてくれるという意味でいい映画だった。
投稿者 hideo:2006/12/26 01:12 > コメ (0) > トラバ (0)
2006年12月24日
「野洲スタイル」山本佳司

「今年の野洲は去年と比べてどれくらいセクシーですか?」と聞かれ、「うーん、キャミソールくらいやな」と答える。テレビで見ていてどうも目がキラキラしているなと思えば、カラーコンタクト入れているらしい。
型破りなのは言動と行動だけでなく、彼が作った野洲高校というチームのスタイル。その集大成はこの前の選手権決勝、田中のインターセプトから短時間で6本のパスを通して瀧川のゴールに繋がったあのシーン。パスが繋がるにつれ、国立が期待でどよめいていったのがとても印象深い。
高いゴール設定はあくまでも実現するためのものであり、そのために選手のモチベーション向上とか中学生世代の育成、徹底的な技術指導など、非常にプラクティカルなことをやっている。監督就任当初、マネージャーを除けば12人、しかもその内半数しか練習に出てこなかった野洲高校を10年間で選手権優勝校にした結果は見事としか言いようが無い。
それでもこの人、スクールウォーズで指導者のあるべき姿を、スラムダンクで「サッカーマン」としての生き方を見いだしたとか天真爛漫に書いてしまうところが憎めない。
文章も平易で分かりやすく、強い想いが伝わってくる。
読んでいて爽快な気持ちになります。
投稿者 hideo:2006/12/24 09:08 > コメ (6) > トラバ (0)
2006年10月05日
「小沢主義」小沢一郎

結論から言いますが、「美しい国へ」を読んだ後で、これを読むとあまりの中身の無さに驚くことになります。マスコミは、小沢一郎という政治家の幻影ばかり強調していることがよく分かる。
二大政党制とか言う前に、まずは自分自身の主義主張を打ち出すべきだろう。確かに、安部さんの本だって経済面などについては具体的な策が無い。しかし、国をどういう方向に持って行きたいのかは分かるし、気迫を感じる。小沢さんの本は、歴史の偉人から学べ、リーダーシップを持て、自己責任だと掛け声だけは立派だが、その中身が全くと言って良いほど感じられない。小沢一郎という個性が、この本からは殆ど感じられないことには驚くしかない。
名古屋のホテルで30分で読んだ。
30分以上かける価値は無いと思います。
投稿者 hideo:2006/10/05 23:58 > コメ (0) > トラバ (0)
2006年09月28日
「美しい国へ」安部晋三

組閣がされたということもあって、読んでみました。
率直な感想として、安部さんが目指す到達点としての「美しい国」には共感できた。ひとりで考えたり、相方と話をしたりする時に出る問題意識とほとんど同じ。さすがに政治家サラブレッドの御曹司ということで、大局観を持っていらっしゃる。そういう人が、政治のトップにいるということは非常に頼もしく思う。
後は、実行面。到達点にどうやってたどり着くのか。安部さんがやろうとしている「国づくり、人づくり」は、首相が主導権をとって理想主義的に国民を引っ張っていく必要がある。そのベースは国民からの支持。それは経済の安定的な成長に基づいていると思う。
日本の経済の安定は、アジアとの関係なくしては語ることはできない。この本では、経済政策と、アジア外交について殆ど話が出てこない。安部さんの弱点と言われているこの大きな戦略の柱をどうするか。この点について着目していこうと思います。
投稿者 hideo:2006/09/28 01:38 > コメ (0) > トラバ (0)
2006年02月17日
究極の勝利(清宮 克幸)

水曜日の夜、岐阜某所のホテルに着いてからやることもなかったので、ベッドに入りつつ読了。早大ラグビー部をどん底から常勝軍団に変えた清宮さんの想いが暑苦しいくらいに伝わってくる。
高くても到達不可能ではない目標の設定、極めて論理的な現状分析と課題の抽出、地道な基礎体力作り、そして最後に1ミリ相手に勝る精神力。苦しくも健全な競争環境を創りだすチームマネジメント。
あまりの暑苦しさにむせ返ることを除けば、立派な組織戦略論。
投稿者 hideo:2006/02/17 00:18 > コメ (0) > トラバ (0)
2006年01月28日
東京飄然、日程発表

町田康の本は、どうせマンネリだよなあと思いつつも買ってしまう。元来社会に不適合で、旅に不慣れときている。それでお供を連れて2人でふらりと旅に出てみれば、何か新しい発見があるだろう。と思いきや、結局濃縮された俗世間でしかなかった、悲しい、というノリ。書きっぷりがいつも以上に軽妙で、ゲラゲラ笑った。現代版「阿呆列車」というところ。
東京の日程が出た。松本開催は、クラブ運営的にもチームのことを考えてもどうかと思うところはあるけど、個人的には松本には行きたいと思っていたので非常に楽しみ。
投稿者 hideo:2006/01/28 08:54 > コメ (0) > トラバ (0)
飲み屋と起業家、ほりえもん
木曜日は三河、金曜日は岐阜近辺にて仕事をして、22時過ぎに品川に戻り、タクシーで三茶へ移動。QJIRO KITCHENにて遅い晩飯。Qちゃん、JIROさんそろい踏み。俺はここの店、好きだ。三茶PENYAの活動場所はここにしたい。テレビとか無いけど関係ない。料理美味いし、酒も揃ってる。今日も、「せんべい」と「カマスの焼き魚」をサービスしてくれた。10,050円のところ50円はいいですよ!と言われて、魚っとしたけどね。
焼酎の九曜、木挽×2をロックで。さらに、サービスで酔鯨を飲んでいい気持ちだあ。

そうそう、昨日、早朝の品川駅にてこの本を買って読んだ。ひとりの飲食店経営者が、ステークホルダーを満足させるという原則の下に、いかに会社を大きくしていくか、そのために何をする必要があるのか、醍醐味がどこにあるのかといったことが、飄々とした文体で綴られる。しかもバリュークリエイト社とほりえもんには少なからず関係があって、物語の中では半ば批判的に描かれているとなると、グイグイっと興味をひかれてしまう。実際、すらすらと楽しく読めて、爽やかな読後感。勉強にもなった。新幹線のおともとして僭越ながらオススメ。
投稿者 hideo:2006/01/28 00:51 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年07月02日
サービスの底力!(相澤賢二)

「顧客満足」はお客様のためではなく、自分のためである。など、「サービス」の本質を分かりやすい言葉で明快に説いていく。著者はホンダのディーラー(クリオ新神奈川)の社長。この会社は現在まで8年連続で顧客満足度が全国ナンバーワン。ホンダの他ディーラーはもちろんのこと、他の自動車会社までが見に来る凄い店らしい。
徹底的な掃除、常に小走りで走る店員、手作りの内装、派手なチラシやプライスボードの排除、クロージングをしないなど、共通するのは「売る店」ではなく「買っていただく」であろうとすること。売り掛け(ローン)や値引きは行わないのは、徹底したサービスに対する付加価値を顧客に提供していることに自信があるからだ。
店長のまじめで熱い想いが伝わってくる。サービス業にかかわらず、人と接して商売を行っているすべての人にとって自らを振り返るきっかけになると思う。
投稿者 hideo:2005/07/02 10:11 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年07月01日
ジェネレーションY(日本経済新聞社)

米国では1970年代後半生まれ、この本では1975年生まれ以降をジェネレーションYと定義する。日本でマーケティングを語るときに団塊Jrと同様の定義がされるが、団塊Jr世代は正確には1971~1974年生まれの「第二次ベビーブーマー」世代を指すことが多い。しかし、この世代は実は団塊世代よりも前の世代の子供で、1975年以降の層が団塊Jrであるというのは面白かった。すなわち、Gen.Yは1975年以降生まれで、団塊の子供達ということになる。
色々な場面で活躍したり苦悩するY世代の現象面を追いかけて淡々とその姿を描き出していく。経済成長を知らない初めての世代。バブル崩壊や阪神・淡路大震災、その後のデフレ経済を若い頃に味わう。表層的な情報はすぐに手に入る、質よりも量を重視するコミュニケーションは希薄化する。ロールモデルがいない。
仮想現実の中での理想主義と、お金を儲けることへのダイレクトさを併せ持つ不思議な世代。がむしゃらにがんばれば成功してきた団塊以上の世代、バブルに踊った少し上の世代、そして何もないところから始まった今の世代。どう判断するか、まだ分からない。20年後、どんな姿になるのか少し考えさせられた。
投稿者 hideo:2005/07/01 00:03 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年03月03日
バナナがバナナじゃなくなるとき(ダイアナ・ラサール)

マーケティングにおける「エクスペリエンス」について事例をもとに紐解く本。「良いモノ」や「良いサービス」を売るだけでなく、相手を人間と捉えて、彼らの五感を最大限に刺激することが成功の秘訣であると謳う。残念なのは、「エクスペリエンス」をアメリカの事例で語るがために、日本人にとっては非常に薄っぺらく感じてしまうことと、最終的に述べられていることがマーケティングの世界では「当たり前」であること。これが無ければこの本は良い本であると思うが、これが無ければこの本は無いものと同じ。つまらなかった。
投稿者 hideo:2005/03/03 00:18 > コメ (1) > トラバ (0)
2005年02月26日
明るい旅情(池澤夏樹)

沖縄、イギリス、トルコなど様々な土地での出来事を主観で語る紀行小説。世知辛い東京を片隅に置きながら、その土地の雰囲気を全身で浴びるスタンスは、読んでいて羨ましいと感じた。ただ、著者の論理的な部分が頭をもたげていて、読み物としては「堅苦しい旅情」になってしまっているのが辛いところか。
投稿者 hideo:2005/02/26 23:05 > コメ (1) > トラバ (0)
2005年02月20日
笹塚日記 うたた寝編(目黒孝二)
笹塚日記の第3弾。第2弾「親子丼編」があることは知らなかった。2002年6月から2004年8月まで、書評家である著者が、日常をひたすらに淡々と綴っている。それでも日常にとんでもない変化が起こることなんて希で、仕事でもある読書にふけり、自炊をして、土日は競馬場の繰り返しが延々と続く。
俺自身が笹塚に住んでいたことがあるので、内容の面白さというよりも日記の中に登場する駅前のQueens ISETANとか、10号通り商店街とか、新宿の池林房とか、そういう笹塚・京王線コンテンツがちらっと見えるだけで楽しいし、懐かしい。
投稿者 hideo:2005/02/20 10:26 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年02月16日
ニート(玄田有史、曲沼美恵)
Not in Education, Employment, or Training、学生でもなく、職に就いているでもなく、職業訓練の状態にもない人々のことをニートと呼ぶことが割と一般的になって、そのままの題名で本で出ていた。著者は東大助教授と日経新聞上がりの女性のフリーライター。
ニートは無業者であって、フリーターとは違うこと。その存在は統計データから90万人弱いると読み取れることなどの事実面が語られた後は、ひたすら現場でのインタビューの列挙とそこからの類推という船酔いするような構成になっている。結局、ニートとなる原因は人それぞれで良く分からない。ただ、コミュニケーション能力が欠けていること、それはちょっとしたきっかけに過ぎず、誰しもがニートになる可能性があると論じられても、作品としては迫力が無い。ただ、「働こうとしない人って、どんな仕事をしたいかがわからないんじゃなくて、何をして遊びたいかが、わかってないんじゃないかな」という高校を中退したニートではない若者の言葉は印象に残った。
投稿者 hideo:2005/02/16 01:59 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年02月12日
帝都東京 殺しの万華鏡(新潮文庫編集部)

昭和初期、9年から11年くらいまでに帝都東京市で起こった事件を、実際に担当した刑事や裁判官が振り返る形で綴られたノンフィクション。新潮社の大衆月刊誌「日の出」から選られたもので、刑事が紙面上で事件のことをあまりに開けっぴろげに語っているのが今となっては新鮮に映る。事件が起こったとき、犯人を追いつめる時、刑事は使命感ももちろんあるんだろうが、それよりも得も言われぬ高揚感に動かされていることがよく分かる。
また、当時の東京市の雰囲気も伝わってくる。木賃宿(ドヤ)、待合い宿、妾、捕り縄などが当たり前のように登場する。特に、下水道の中に住んでいて、流れてくるものを物色して生活の種にしている人の存在にはびっくりした。女の人もいたらしい。当時も今も変わらぬのは、痴情のもつれで凶悪な殺人が絶えないということか。
投稿者 hideo:2005/02/12 23:48 > コメ (1) > トラバ (0)
2005年02月09日
白痴(坂口安吾)

代表作である「白痴」を含む、全7編。確信的に、ほとんどの話の中で「白痴」の女が出てくる。頭が悪いという描かれではなく、感覚的に世間とずれている。それは物事のスピードであり、道徳の基準であり、何を重要と考えるかの判断の根幹である。要するに、「ちょっとあの人おかしいんじゃない」という「白痴」の女と男の話が戦争を背景に描かれている。
7編ともに描かれているテーマが近しいので、つらつらと読めば飽きてくる。しかし、そうならないのは、描写が巧みで、ちょっとした会話のやり取りから読みとれる心の繊細な動きが詩的であること。そして、話の最後の方で見られるほんのわずかな心の動きが、それまでの予定調和を突き崩し、読み手に堰を切ったような感動を与えてくることにあると思う。
投稿者 hideo:2005/02/09 22:36 > コメ (2) > トラバ (0)
2005年02月07日
スティル・ライフ(池澤夏樹)

「スティル・ライフ」と「ヤー・チャイカ」の2編。ともに、主人公とおぼしき人間ともう1人の人間による会話が物語構成の中心で、たまに独り言や、夢のような描写を含んだモノローグが入りながらも淡々と進む。共通して読みとれるテーマは、自分と他人、自己とそれ以外、移ろいやすい現実としての世間と普遍的な物理・宇宙、さらに、その中でメッセンジャーの役割を果たすもの。
読み手に想像させる仕掛けも含めて描写が美しいので引き込まれて一気に読んだ。どちらかと言うと、芥川賞の表題作よりも「ヤー・チャイカ」が好きだった。ロシア、シベリア、軍事スパイ、恐龍ペット、白い霧、スケート、自分の娘。みんな、2つくらいの意味を持たされているもんだから、漂ってしまう。漂いながら読み終えると、何となくホッとして暖かいような、少し寂しいようなそんな雰囲気が残った。
投稿者 hideo:2005/02/07 00:34 > コメ (2) > トラバ (0)
2005年02月04日
帝都東京・地下の謎86(秋庭俊)

大正から昭和の戦前・戦後にかけての東京市の地下にまつわる謎が、見開き1ページづつの全86話で紹介されている。「謎の紹介」というところがポイントで、「謎の根拠を示して、解いた結果の紹介」では無い。それをどう解釈するかは読み手に任されている。
作者は電波系とか色々言われているようだけど、確かに訳の分からない文章になっているところも多い。しかし、根拠の怪しい話の仕方も、「謎」の一環として読めば、想像力がかき立てられてくる。政府、東京市、大日本帝国陸海軍などが市民の知らないところで、地下鉄、地下道路を張り巡らせていた。現在の営団、都営、京王、小田急が保有する地下路線や、様々な地下街にはその頃の名残がある。そして、他にもまだ知られていない地下鉄・道路があり、関係者の中で箝口令がしかれているという話はミステリアスで面白い。
投稿者 hideo:2005/02/04 01:15 > コメ (6) > トラバ (1)
2005年01月31日
猫はどこ?(林丈二)

路上観察者としてトマソン探しなどで有名な作者が、「我が輩は猫である」のモデルとなった漱石が飼っていた猫の子孫を捜すことから始まり、色々なテーマで色々な土地を旅して、過去の新聞記事や文献を参照しながら検証していく、いわば実証主義者のレポート。
と言えば聞こえはいいけど、単純に猫にまつわる話、記事、そして何よりも写真と絵が最高にかわいくて猫好きには内容度外視してもたまらん作りだ。巻末の「猫の尾まけ」というコーナーに、国内外の猫関連の絵はがきやらポスターを紹介するコーナーがあるが、ばからしくて最高に笑える。それと、飼い猫に向かって、視力の低下を憂いたところ、猫も憂う様子を見せ、しばらくすると飼い主の視力が回復し、飼い猫が柱に頭をぶつけるようになったという話は素直に泣けた。
投稿者 hideo:2005/01/31 00:07 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年01月26日
夫婦茶碗(町田康)
性根が腐っているというか、DNAが欠損しているというか、とにかく社会生活を全うにおくる機能に乏しい人間が、それでも生きていこうとして、どうしようもない世間との相対距離に愕然として、とにかく「逃げる」、「逃げる」、「逃げる」、でも逃げ切れなくて最後に精神的に崩壊していく話。
飾らずに具体的に生々しく書いているもんだから、一息に読んでしまう。そうすると、ああ、自分とは大分違うが、それでもほんの少しの隙間から現実感が強固に迫ってきて、これはしんどいなあと思う、そんな読後感がある。しかし、しばらく経つと、途中途中で、崩壊が起こるほんの一瞬前の美しい描写が思い出される。主人公があまりに駄目過ぎるもんだから、その美しさがより一層引き立つ。涙を誘う。
「夫婦茶碗」では、一瞬思い出す、妻、いや彼女との美しい一時。
「人間の屑」では、一瞬手に届きそうになる「生き甲斐」。
投稿者 hideo:2005/01/26 23:27 > コメ (1) > トラバ (0)
2005年01月21日
父の詫び状(向田邦子)

作者は、昭和2年生まれ。青春時代のまっただ中に戦争を迎える辺りまで、家長制度が色濃く残る時代を背景として、作者が経験する様々なエピソードが淡々と紹介される。その中では、必ず無骨で見栄っ張りな父親に家族が振り回される姿が描かれている。
時代背景が違うこと、俺が男であることから、共感することはできなかった。ただ、昭和初期の東京は目黒周辺(競馬場跡、油面小学校など)の姿、空気感を淡々と感じるという、ちょっとねじれた観点で楽しんだ。
投稿者 hideo:2005/01/21 01:19 > コメ (1) > トラバ (0)
2005年01月18日
蛇を踏む(川上弘美)

「蛇を踏む」、「消える」、「惜夜記」の3作。描かれる世界は、物理学的な秩序から隔絶していて、「そんなのあり?」と思うような展開が当たり前のように、普通に続く。夢を書き起こして、抜けているところを紡いだような世界。いないものがいたり、溶けたり、消えたりは当たり前。
変に何かを読みとろうとするものではなくて、この世界にどっぷりと浸れるかどうかで好みが分かれると思う。表現の妙に背筋に鳥肌が立つシーンも2, 3。俺?口のところまでは浸ってるけど、目は陸と空を見ているような。
投稿者 hideo:2005/01/18 23:13 > コメ (0) > トラバ (0)
第一阿房列車(内田百閒)

奇怪な物語で、読者を恐怖に陥れる内田先生が鉄オタであったということが良く分かった。その生きた証のような本。人に借りて作った金で、日帰りとんぼ返りの大阪旅行。行く先々で出会う人は鉄道関係者ばかり。端から見れば馬鹿げているとしか思えないが、先生にはその行為そのものに意味がある。
阿房列車に乗せられた読者の楽しみは、お供の男や旅先で出会う人との会話のすっとぼけた雰囲気。素朴過ぎる場面には思い当たるところもあって、声に出して笑った。
投稿者 hideo:2005/01/18 22:50 > コメ (0) > トラバ (1)
2005年01月12日
桜の森の満開の下(坂口安吾)
全体的に物語調は面白く、歴史モノは面白くない。
タイトルの「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」。非常によく似ているこの2つの話が印象深く、個人的に好きだった。
綺麗な女が人の生首で遊んだり、人を呪い殺して、それを見るのを楽しんだりする姿が、幻想的な歴史世界の中で、批評的に割と淡々と書かれていることに美しさを感じる。淡々と話が展開して、そして話の最後では、満開の桜が、胸からあふれ出る血が、鮮やかな彩りで一気にこみ上げる様が非常に破壊的で、読んでいて快感だった。
投稿者 hideo:2005/01/12 23:59 > コメ (1) > トラバ (0)
2005年01月06日
サッカー監督という仕事(湯浅健二)

作者について、爆裂的なスピードで現場感の伴うレビューを書き上げるヒゲのオヤジ、読売と割と関係がある、それくらいの認識だった。今回、初めて著作を読んで、非常にバランス感覚のある頭の良い人だなと思った。頭の良い人は、分かりやすい文章を書く。横文字が多様されるのは置いておくとして、非常に読みやすい本だった。慣れた人なら新幹線の片道分。
主にドイツでのコーチ留学の体験をもとに、実際の試合場面を引用しながら、良い監督に必要とされるものについて語られる。特に、「心理マネジメント」と、それを実行するための「パーソナリティ(人間的魅力と強い意志)」が一貫して強調されていることに、自分が知っている範囲でのビジネス環境と照らし合わせて納得した。
○とにかくダメ出し、ネガティブ発言しかしない。
○平等な競争環境を作らない(スターは意味も無く優遇)。
○方向性が無い(考える際の基準が無い、ズィーコ)。
○厳格すぎて自由が無い(オフト)。
○人間的魅力が無い。
こういう人って一般の企業のマネジメント職にうじゃうじゃいる。選手が自発的に考えて、時にはルールを超越して動く環境をいかに上手く作り出すかが監督の重要な仕事であると。コーチングの教科書とも言えるこの本を、是非とも世の中のマネージャー諸氏に読んで貰いたい。
投稿者 hideo:2005/01/06 23:26 > コメ (0) > トラバ (0)
きれぎれ(町田康)

芥川賞受賞の「きれぎれ」と「人生の聖」の2本。
2本の間には共通する出来事もある。
ダメな男がひたすらダメな事を思い、発し、行い、そして狂う。その先には、ダメだと思っていた旧友が成功者として自分を見下している。金を借りた上に、犬のようにハムを与えられる。卑屈にハムを貰う。そりゃあ狂うぜ。
人の陰惨でドロドロとした心の一面を、「弱い奴」というレッテルを貼った上で、馬鹿馬鹿しいと思いながら安心して楽しむことができるエンターテイメント作だと思った。
投稿者 hideo:2005/01/06 17:32 > コメ (0) > トラバ (0)
2005年01月04日
実録・外道の条件(町田康)

この先生は瑞々しい感性と、それを具現化する術(言葉)をお持ちになっているにも関わらず、余りにも人間として、いや日本人として全う過ぎるために、人にNo!とは決して言えない。言えないが故に、利己的で、薄っぺらいずる賢い小人物達のせいで、酷い目に遭う。そんな酷い目に遭ったエピソードが4本したためられている。先生の瑞々しい単語の使い方と、物語のおかげで、抱腹絶倒なんだけど・・・。
とにかく、出てくるペテン師どもが皆凄まじいくらいに人間、日本人として終わってる。特に「地獄のボランティア」という逸話には感じるものがあった。この話に登場するボランティア機関誌の主宰者は、無料で人を使うことだけに自分自身の存在意義を見い出す。自分を殺して他人に報いるという本質を忘れて、単語が持つ狭義の定義空間に操られる悲しさ。もはや偽善ですら無い。
日本の糞審判が持っているメンタリティと通じるものがある、俺個人的には、そう思う。審判養成講座の課題図書にしてくれ。そして、「審判はボランティアだから、彼らがいなくなったら・・・」とかほざいてる奴らに鉄槌を食らわせてやれ。
投稿者 hideo:2005/01/04 23:36 > コメ (1) > トラバ (0)
2004年12月29日
猫にかまけて

町田康が一緒に暮らした4匹の猫の話。
ココア、ゲンゾー、奈々、そしてヘッケ。
下北沢、代沢あたりの空気感。
ココアとヘッケは既にこの世にはいない。
特に、初めて失うことになるヘッケへの想いは強い。
弱っていたヘッケを拾い、看病して元気になったと思いきや、ウィルス性の白血病と腹膜炎を併発し、そして再び弱って死んでいくのを見届けるところで前半が終わる。遊び好きで、「うひょひょ」と笑うヘッケが大好きだったこと、そしてそれだけにとんでもなく大きい喪失感がユーモラスに淡々と書かれる。
猫好きにとって猛烈にいい本だった。
泣ける。
投稿者 hideo:2004/12/29 17:11 > コメ (0) > トラバ (0)










